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緊張を一瞬で消す脳の使い方──思考を止める「無考」の力

人は大事な場面になると緊張する。
「失敗したらどうしよう」「恥をかくのではないか」「うまく話せなかったらどうする」など、頭の中は不安と予測で埋め尽くされる。
この思考の嵐こそが、緊張の正体である。
実際、緊張は外部の出来事そのものが生み出すのではなく、それについての思考が生み出す。
つまり、同じ場面でも緊張する人としない人がいるのは、出来事ではなく頭の中の物語が違うからである。
無考の状態では、この物語が存在しない。
思考が沈黙すると、ただその場にいるだけとなり、緊張は発生しようがない。

面接やスピーチの場面で、多くの人は事前に何度もシミュレーションをする。
「質問されたらこう答えよう」「あの部分で詰まったらどうしよう」と考え、頭の中で何百通りもの未来を描く。
この予行演習は役に立つように見えて、実は緊張を強化している。
なぜなら、そのすべてが「失敗を防ぐため」という前提で動いているからだ。
失敗を防ごうとする思考は、失敗というイメージを何度も再生し、身体を緊張モードに固定する。
無考の状態では、未来を予測しない。
ただその瞬間に起こることを、その瞬間に対応する。
それは即興演奏のようであり、事前の不安という負荷を全く持たない。

興味深いのは、緊張を消そうとする努力が、逆に緊張を増幅させるという事実である。
「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かせるほど、心は「今、自分は落ち着いていない」というメッセージを受け取り、さらに緊張が強くなる。
緊張を排除しようとする戦いは、緊張を維持する回路を作ってしまう。
無考の状態では、この「戦い」そのものが消える。
緊張していても、それを分析しない。
良いとも悪いとも評価しない。
ただ感覚として存在させておくと、やがて自然に消えていく。

緊張が最も強くなるのは、他人の評価を意識したときである。「うまく見られたい」「悪く思われたくない」という思考は、常に外の目を気にさせる。この外部意識が、自分を不自然な動きやぎこちない言葉に追い込む。無考では、他人の目という概念が弱まる。その場の出来事は単なる現象であり、評価はただの思考に過ぎないとわかる。この認識の変化が、自然体で動くことを可能にする。

試験や試合の前日、多くの人は眠れなくなる。
これは緊張そのものではなく、緊張を恐れる思考が原因である。
「寝なければ明日はダメになる」という思考が、さらに眠りを妨げる。
無考の状態では、眠れなければ眠れないままでいいと受け入れる。
その受容が逆説的に心を緩め、自然に眠りに落ちる。

私自身、面接や大規模な講演のとき、かつては極度の緊張に襲われていた。
原稿を必死に暗記し、何度もシミュレーションを繰り返したが、本番では頭が真っ白になった。
しかし、あるとき思考そのものを止めることを覚えた。
緊張を消そうとも、コントロールしようともせず、ただその瞬間の呼吸と感覚に注意を向けた。
結果、本番では不思議なほど落ち着き、言葉は自然に出てきた。
聴衆の反応も良く、自分でも驚くほどのパフォーマンスができた。

緊張は敵ではなく、ただの感覚である。
思考が物語を作らなければ、それは瞬間的に生まれ、瞬間的に消える。
無考の状態こそ、あらゆる場面で自然体の自分を発揮するための最もシンプルで強力な方法である。

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無考神道・教祖

無考神道の教祖。 自身が日常生活の中で「無考」に至ったことから、日常生活での実践に重きを置いている。 また、無考によって司法試験に合格、年収3000万円超を達成、癌からの生存を実現するなど現世的な利益を得た経験があるため、現世的な願望を否定しない。

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