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頭の中のおしゃべりを止める無考の力

私たちの頭の中では、一日中絶え間なく言葉が流れ続けている。
「今日の会議はうまくいくだろうか」「あの時ああ言えばよかった」「明日は何を着ていこう」といった具合に、まるで誰かがずっと話しかけているかのように思考が止まることがない。
この頭の中のおしゃべりこそが、私たちの能力を制限し、本来持っている力を発揮できなくしている最大の要因である。

頭の中のおしゃべりを止める方法、それが「無考」という状態である。
無考とは文字通り考えを無くすことであり、思考の雑音を完全に消し去った静寂の状態を指す。
多くの人はこの状態を神秘的なものや宗教的なものと捉えがちだが、実際には極めて実践的で現実的な技術なのである。

無考の状態に入るためには、まず自分の思考パターンを観察することから始める必要がある。
朝起きてから夜眠るまでの間、私たちの頭の中でどのような言葉が流れているかを客観視するのである。
「お腹が空いた」「電車が遅れている」「上司の顔を見たくない」など、実に様々な思考が次から次へと湧いてくることに気づくはずだ。

これらの思考は、過去の記憶や未来への不安から生まれている。
つまり、今この瞬間に集中していない証拠である。
無考状態とは、過去でも未来でもない、まさに「今」という瞬間に完全に没頭している状態なのだ。
この状態では、判断や評価、心配や期待といった思考の働きが一切停止し、純粋な行動や感覚だけが残る。

無考を実践する具体的な方法はいくつか存在する。
最も基本的なのは呼吸に意識を集中させることである。
鼻から入ってくる空気の温度、肺が膨らむ感覚、息を吐く時の音に全神経を注ぐ。
思考が湧いてきたら、それを無理に押さえつけるのではなく、再び呼吸に意識を戻すのである。

また、日常の動作を意識的に行うことも効果的だ。
歯を磨く時は歯ブラシの感触だけに、歩く時は足裏の感覚だけに、食事をする時は味覚と咀嚼音だけに集中する。
このような単純な動作に完全に没頭することで、自然と思考のおしゃべりは止まっていく。

多くの人が無考を実践しない理由の一つに、「考えることをやめたら判断力が鈍るのではないか」という恐れがある。
しかし、これは完全な誤解である。
無考状態では論理的思考は停止するが、直感的な判断力は逆に研ぎ澄まされる。
頭の中のノイズが消えることで、本当に重要な情報や感覚がクリアに認識できるようになるのだ。

スポーツの世界では、この状態を「ゾーン」と呼ぶ。
一流のアスリートが最高のパフォーマンスを発揮する時、彼らは考えることをやめ、体の感覚と動きに完全に委ねている。
ビジネスの世界でも同様で、優秀な経営者や営業担当者は、重要な局面で思考を止め、直感に従って行動することが多い。

私自身、無考の力を身をもって体験してきた。
司法試験の勉強中、最初は膨大な量の条文や判例を暗記しようと必死に頭を働かせていた。
しかし、思考が活発になればなるほど、不安や焦りも増大し、集中力は散漫になっていった。
そんな時、無考の実践を始めたのである。
勉強前に必ず十分間の無考状態を作り、頭の中のおしゃべりを完全に止めてからテキストを開くようになった。
すると、文章の理解度が格段に向上し、記憶の定着も良くなった。
試験当日も、問題文を読む前に短時間の無考状態に入ることで、冷静かつ的確な判断ができるようになり、結果として合格を掴むことができた。

ビジネスの世界でも無考は威力を発揮した。
年収三千万円を達成する過程で、重要な商談や投資判断の場面では必ず思考を止めることを実践した。
頭の中で「失敗したらどうしよう」「相手は何を考えているのだろう」といったノイズが生じると、本来の直感や洞察力が曇ってしまう。
しかし、無考状態で相手と向き合うと、言葉では表現できない微細な情報を察知できるようになり、最適なタイミングで最適な提案ができるようになった。

無考の効果は即座に現れるものではない。
継続的な実践によって、徐々に思考のコントロールが上達し、意図的に無考状態に入れるようになる。
最初は数秒間しか続かなくても構わない。大切なのは毎日少しずつでも実践を続けることである。

私が最も驚いたのは、無考が健康面にも大きな影響を与えたことである。
数年前、医師から癌の告知を受けた時、当初は「なぜ自分が」「これからどうなるのか」といった思考が頭の中を駆け巡り、不安と恐怖に支配されていた。
しかし、この状況でこそ無考の実践が重要だと気づき、一日の大半を無考状態で過ごすことにした。
思考による心理的ストレスが消えると、体の自然治癒力が活性化されるのを感じた。
治療と並行して無考を続けた結果、予想以上に早い回復を遂げることができた。
医師も驚くほどの改善だったが、これは無考によって心身が本来の力を取り戻した結果だと確信している。

現代社会は情報過多であり、私たちの頭の中は常にざわめいている。
メディアからの情報、人間関係のストレス、将来への不安など、思考を刺激する要素が無数に存在する。
だからこそ、意識的に頭の中のおしゃべりを止める時間を作ることが重要なのだ。

無考を身につけることで得られる恩恵は計り知れない。
集中力が飛躍的に向上し、創造性が開花し、人間関係も改善する。
何より、常に頭の中でささやかれていた不安や心配の声が消えることで、心に深い平安が訪れる。
これまで思考に支配されていた人生から、思考を道具として使いこなす人生へと変わるのである。

頭の中のおしゃべりを止めることは、決して難しいことではない。
ただし、現代人にとっては慣れ親しんだ思考パターンを変えることになるため、根気強い実践が必要である。
しかし、その先に待っているのは、これまで体験したことのない静寂と、そこから生まれる無限の可能性なのだ。

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無考神道・教祖

無考神道の教祖。 自身が日常生活の中で「無考」に至ったことから、日常生活での実践に重きを置いている。 また、無考によって司法試験に合格、年収3000万円超を達成、癌からの生存を実現するなど現世的な利益を得た経験があるため、現世的な願望を否定しない。

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